「思い出した?」

まだ不安定な表情のまま、萌絵がみんなに尋ねた。

「ああ」

駿が答えると、ベンチに座った。

「でも、へんだ」

「なにが?」

「なんで今まで下沼さんのことを思い出さなかったんだろう? それに、きもだめしのことも、なんだか曖昧にしか思い出せない。おかしいよな?」

「おかしいのは今夜のこと全部でしょう」

萌絵が静かに言う。

「みんな次々に死んで行って、それでいて誰も下沼さんのこと思い出さない。記憶が操作されたに決まっている」