「無理。やめてよぉ」

消え入りそうな声を出した下沼さんだったが、萌絵が譲らないのを知るとあきらめたようにうなだれ、抵抗をしなくなった。


「・・・楽しいのかな?」

ぽつりとつぶやく。


「なにが?」

入り口にある黒いカーテンを押しのけながら萌絵が尋ねる。


「みんな私をいじめて、そんなに楽しいのかな」


一瞬言葉につまった萌絵は、聞こえなかったことにして下沼さんを先に行かせた。



下沼さんの表情がおかしいのに、その時はまだ気づいていなかった。