「やだ、待って。待ってよ!」

七海が馬から降りた。

「おい、あぶねぇ!」

雅哉が言うが、必死な七海は、
「お願い! 夢くん、助けて!」
と、言いながら馬と馬の間をすりぬけて歩こうとする。

「待てよ!」

雅哉が手を伸ばすが、それをかわした七海はふらふらと歩き出す。

「夢くん、夢くん!」

それはまるで最後の女神にすがろうとする人のよう。

あるいは夢遊病の人みたい。

回転はどんどん速くなっているようだ。


馬車のでっぱりにしがみついていないと放り出されそうなほど。