やがて枠をつかんだ左手が離れたかと思うと、紗栄子の体はぐるんと回って右手と右足だけで機体に残った。

紗栄子の後姿が視界に入った。

機体は下降をはじめている。


戻ってくるまでなんとか持ちこたえて!

間に合って、間に合って!


紗栄子がまた悲鳴を上げた。

「どうして」とか「あなたが」

そう言ったように聞こえた。


しかし次の瞬間、紗栄子の片手は枠から外れ、一気に落下した。


鉄骨部分に当たり、鈍い音をさせながらパチンコ玉のように右へ左へとぶつかりながら落ちてゆく。

長い悲鳴が空に溶けた。