意識が戻ったのは
薄ら寒くなってきた気温の変化と
うるさいくらいに鳴っている着信音のおかげ
ぼんやりと目を開くと
俺は仰向けに倒れていて
綺麗な星空が見えていた。
夜?
起き上がると身体中が痛い場所だらけ
蹴られた腹と
踏まれた頭と
真一文字にカッターナイフで切られた喉元。
シャツに血がこびりついている。
うわぁ
二度目の血まみれ。
ぐわんぐわん鳴る頭を押さえて電話を取ると、妹のキンキン声が襲い掛かり余計に頭が痛くなった。
『お兄ちゃんどこにいるの!』
「あ?……えっと……」
あまりの迫力に言葉が出ない
『6時以降は外出禁止って言われてるじゃん。みんな心配して……颯大!』
急に妹から母さんに声が変わる。
妹より大きく鋭い声だった。
『無事なの?大丈夫なの?どこにいるの?七瀬ちゃんは一緒なの?』
七瀬?
その名前を聴いて痛みが飛び
頭の中がクリアになる。
須田海斗が七瀬を誘って
夜、ここに来る。
七瀬が危ない!
『七瀬ちゃんが行方不明なの。七瀬ちゃんは最近調子が悪くて貧血気味で、そんな時に急に連絡取れなくなっちゃって、みんな心配してるのよ。颯大と一緒なの?』
責めるような
一緒にいてほしいと
祈るような声だった。
「一緒じゃないけど心当たりはある」
そう
ここらへんにいるはず
近くに必ずいるはず。
「探してみるから心配しないで」
『颯大!』
叫ぶ母さんに心の中で謝りながら、俺は電話を切って立ち上がった。