「あ、そーだ」







蓮見が唐突に声を上げたので、あたしはねぎ間を咥えたまま隣を見上げる。






「忘れてた」





「ふぇ? はひ?(へ? なに?)」






蓮見がビールのジョッキを左手に持ったまま、右手でコートのポケットをごそごそとまさぐる。





あたしはねぎ間をもぐもぐと頬張りながら、蓮見の動きを見つめていた。






しばらくして、蓮見がポケットから、何かを取り出す。





それを、ずいっとあたしに差し出してきた。







「これ、やる」





「ふぇ?はるっへ?(へ?やるって?)」






あたしはねぎ間を噛み締めつつ、手の平を差し出して、それを受け取った。