*
「おい、清水」
「…………なに。仕事の話?」
「いや、違うけど」
「じゃあ、話しかけないでください」
あたしは蓮見の顔を見もせずに、すたすたと室を出た。
あの日以来、あたしは蓮見を無視しつづけている。
とは言っても、職場が同じだから、まったく口をきかないってわけにもいかないけど。
業務上の会話以外は、まったくしていない。
なに意地はってんだろう、と自分でも馬鹿らしく思うけど。
今さら引っ込みがつかないというか……。
ここまできて自分から歩み寄るなんて、なんだか負けを認めるようで嫌だ。
でも、蓮見のほうは、そんなあたしの気持ちなど全く理解不能らしく、不思議そうに首を傾げていた。