それを必死で抑え込んで、あたしは玄関に向かった。




靴を履きながら、振り返ってリビングに目を向ける。





蓮見は既に、パソコンに向かってキーボードを叩きはじめていた。







「………蓮見、鍵は?」






「………んー? あー、開けといて。後で閉めるから」






ちらりとも振り向かずに、背中だけで素っ気なく答える蓮見。





もう心はパソコンに夢中、って感じ。






それを見た瞬間。








ーーーぶちっ。





どこかで、何かが切れる音がした。





その正体を考える余裕もなく。





あたしは気がついたら、今まさに履こうとしていたハイヒールを手に取り。










ーーーぶんっ!!







力いっぱい、蓮見の冷たい背中に向かって、投げつけていた。