それ以上、言葉が出てこなかった。





このまま続けたら、言葉と一緒に、不必要な水分まで出てきそうだったから。



もちろん、目から。





うつむいたあたしを、南くんが凝視している気配を感じる。






「………橘さん」





「…………なによ」





「顔、あげてください」





「…………いや」





「お願いします」





「いやです」






頑なに答えると、南くんがふぅ、とため息を洩らした。






また、『めんどくさい』って思ってるんだろうか。





自分の考えに、ずきんと胸が痛んだ。





もう、やだ。




逃げたい。





あたしはくるりと踵を返し、正門に向かおうとした。





そのとき。






「橘さんってば!!」






南くんがあたしの両肩をつかんだ。