「橘さん!」





………見つかってしまった。




いつにない大声を出して、後ろからあたしを呼ぶ南くん。




その声をなぜさっきの発表中に出せなかったんだ!




と、世話係として若干怒りつつ、あたしはゆっくりと振り返った。



でも、顔が見れない。






「………おつかれ、南くん。

なかなか良かったんじゃない?

じゃ、また明日」






俯いたまま早口で言い切って、足早に立ち去ろうとすると。






「なんで逃げるんですか!?」






がし、と手首をつかまれた。




驚いて視線を上げると、ばっちりと目が合ってしまった。






「なんで、逃げるんですか………」






今度は消え入りそうな小さな声で、南くんがもう一度言った。