―――なぜなら、あまりにも不気味なものを見つけてしまったから。



それは、入り口のドアの隙間から覗く、どんよりと曇った虚ろな目………まさか、幽霊!?


―――そんなわけない。




「………えーと。

もしかして、D大学から来た院生さん?」




必死に作り笑いを貼りつけた顔で声をかけると、ドアの向こうから、




「………はい」




と、ぼそぼそ答える低い声が聞こえてきた。




「あー、はじめまして。どうも、助教の橘です。

とりあえず、そこにいたら寒いから、なか入って入って」



「………どうも」




もそもそ言いながらのっそりと姿を現した男が、大儀そうに会釈してきた。



ぼさぼさの髪。


血の気のない、青白い顔。


目の下に暗く染みついたクマ。


これでもかというほどの猫背。



―――インパクトが半端ではない。



これが、新しく本研究室の一員となった南くんとあたしの、初めての出会いだった。