「………へ、変ですか……」





南くんがぼそぼそと呟いて、上目遣いであたしを見る。





「変であることだけは抗いがたい事実ね。


でもまぁ……いいんじゃない、そのままで……」





ため息とともにそう言うと、南くんが安堵したように笑みを浮かべた。




うわっ、また笑った!とあたしが驚いていると。





「―――橘さんに、ちゃんとスーツ着てネクタイして来いって言われて、がんばって用意したんで、駄目って言われなくてほっとしました」





ネクタイを借りるために父親に電話をすることは、どう考えたって「がんばる」ほどのことでもないんだけど。



究極のめんどくさがり男である南くんにとっては、途方もない労力が必要なことに違いない。



だって、かばんの中身をいれかえるのが面倒ってだけで、10年間も同じバッグを使い続けてしまうようなやつなんだから。