飲み会が始まると、今まで南くんのことを遠巻きに見ていたみんなが、少しずつ近寄ってくるようになった。





「南くんってさ、D大学から来たんだよね?」




「はい」




「マジで!? 超秀才じゃん!」




「はぁ……」




「何でうちの大学なんかに移ってきたの?」





興味津々といった感じのたくさんの目に囲まれて、南くんは少し困ったように、





「前の大学、なんか色々めんどくさかったから」





とぼそりと呟いた。



予想だにしなかった抽象的すぎる答えが返ってきて、空気が一瞬硬直する。





「………へっ、へえ、めんどくさかった……?」




「なにが?」




「なんとなく………」





ぼんやりとした表情で答える南くんを見て、「こりゃだめだ」と悟ったのか、その集団は去って行った。