毎朝8時きっかりに現れる南くんが、いつも同じ黒づくめの服なのに気づいたのは4日目。



真っ黒なシャツに真っ黒なカーディガン、真っ黒なジーンズ、真っ黒な靴。



そして、靴下だけはやけにカラフルな柄物(ただし、左右ちぐはぐ)。





「南くんて、毎日その服だね」



「あー……服選ぶのめんどくさいから」




でしょうね。


分かってましたとも。




「その靴さ、なんかやけにごついね」



「あぁ、安全靴なんで」



「あんぜんぐつ?」



「工場で働いてる人とかが使うんですけど、ほら」





南くんが爪先を何度か軽く床に当てると、ごつんごつんという穏やかではない音がした。





「鉄板が入ってて、重い物とか落ちてきても安心なんです。いいでしょ?」





あたしは「へぇ、ふぅん」と適当にあいづちをうった。




文系大学院生の引きこもりがちな生活のどこに、爪先を鉄板で守らなければならないような危険が潜んでいるのか、はなはだ謎である。