「………ええと、南くん。

そのかばん………一体なに?」





我慢できなくて、あたしは南くんに訊ねた。



南くんがすこし怪訝そうな顔になる。





「え? かばんですか?」




「ええ、かばんですとも」




「はぁ………」




「それ、なんのかばんなの?」




「え………これですか?

中学校のときの補助バッグですけど」





案の定、予想通りではあるものの全く納得できない答えが、「見たら分かるでしょ?」とでも言わんばかりの声音で返って来た。




そりゃ、見たら分かりますけど。




でも、変でしょうが。



なんで、今年で23歳にもなる大学院生が、中学時代の学校指定の補助バッグをいまだに使ってるわけ?





という思いを、あたしはそのままぶつけた。





「………なんでそんなの使ってるの?」