というわけで、あたしはただ、嵐が過ぎ去るのを待っていたわけだけど。





太ももに置かれていた主任の手が、するすると移動して、腰に回された瞬間。







ーーーぶちっ。





こめかみのあたりで、何かが切れる音が聞こえた。






つまり。



キレました、あたし。






すうっと息を吸い込んで、大声を出す準備をする。




そして、主任の手をつかもうとした、その時。






「主任」





あたしのものではない声が、冷ややかに主任を呼んだ。





あたしは驚いて目をあげる。








―――向かいの席に、蓮見が座っていた。






その頬には、ぞっとするほど冷たい笑みが浮かんでいる。