「………吾郎。今まで、ありがとね。


裏で隠れて何されてたとしても、まぁ、吾郎といるのは楽しかったよ。


さよーなら」







あたしはにっこりと手を振り、ばたんとドアを閉めた。





呆然とした吾郎の顔が、冷たい鉄製のドアの向こうに消えた。







ーーーふふっ。



『今までありがとう。楽しかったよ』ーーーだって。





あー、我ながら、ちゃんちゃらおかしい。






ほんとは、吾郎に裏切られたことに対する恨みとか、怒りとか、悲しみとかで、胸のなかはぐちゃぐちゃなのに、ね。






………でも。



ちょっとくらい、見栄はったって、いいよね。






裏切られたからって、醜く取り乱して責め立てたりしない、さっぱりした女を演じたって、いいよね。




これが、あたしのプライドなんだから。