「た、だい、ま……。


えーと………なにそれ」






吾郎はきょとんとした顔で、あたしが差し出しているボストンバッグを見つめている。





あたしはにっこりと笑って、言う。






「吾郎の荷物」






「え? 俺の?

なになに、どっか旅行でも行くの?」







どうやら吾郎は、あたしが吾郎と二人で旅行に行こうとしているとでも思っているらしい。




ほんっと、能天気なやつだ。






あたしは極上の笑みを浮かべ、吾郎に向かって首を傾げる。







「ーーー出て行って。今すぐ」









決別の言葉は、意に反して、するすると口から出てきた。






これまで悩んでいたのが嘘みたいに。