そこまで考えて、あたしはのっそりと布団の中にもぐりこんだ。




いつの間にか、あたしが寝室に入ってから30分近くが経っていた。






ドアの隙間から、リビングにいる吾郎が見える。




ソファに座って、缶ビールを飲んでいるようだ。





そのうち、ドアの向こうで、吾郎のケータイが鳴る。




吾郎はケータイの画面を見て、ひょいとこっちに顔を向けた。



あたしは目をつぶって、寝ているふりをする。





吾郎はケータイを耳に当てて、ベランダに移動しながら小声で話し出した。






あたしに喋るときと同じような、明るくて、甘くて、優しい声音。






――――いやだ、いやだ。



聞きたくない………。






あたしは耳を塞いで、ぎゅっと目を閉じて、息を殺していた。