―――つまり、あたしには、勇気がなかった。




素顔をさらけ出して、心のうちをさらけ出して、吾郎を責める勇気がなかった。






これは、あたしのプライドだろうか?






恋人に浮気をされて、お金を使い込まれていたという情けない自分。



そんな自分を、それを知った自分の顔を、他人に見せたくないというプライド。





恋人の不実を疑って、プライベートを覗き見るという卑怯な真似をした自分を、他人に知られたくないというプライド。





たとえその裏切り者の恋人本人に対してさえ、そんな自分の顔を見せたくない。






吾郎の裏切りを勘づいて情けない行為をしたあたしを、吾郎にでさえ知られたくない。




吾郎の裏切りに傷ついた顔を、吾郎に見せたくない。






あたしが吾郎に何も言えない理由は、結局はそこにある気がした。