「………おやすみ」






口から飛び出したのは、言いたいこと、言わなくちゃいけないことではなかった。




吾郎がさらに首を傾げて、答える。






「? うん、おやすみ」






あたしは小さく手を振り、寝室に入った。




ベッドのふちに腰かけ、壁をぼんやり眺める。






そこにはカレンダーが掛かっていた。




吾郎がここに転がりこんで来てから、もう二ヶ月。





その間、ずっと、あたしは騙されてたのかな。




なにも知らずに、なにも考えようとせず、ただ表面的に寂しさが癒やされることだけに目を向けて。





―――客観的に見て、ひどい目に遭っていると思う。



裏切りを責める資格は、充分あると思う。





でも、あたしは、それができない。