「………吾郎」






「ん?」






「あのさ………」






「なになに?」






「……………」







―――だめだ。



頭に血が昇って、何も考えられない。





言ったら、吾郎はどんな顔をするんだろう。




それより、あたしは、どんな顔をして言えばいいんだろう。






怒った顔?



切ない顔?



悲しみを押し殺した顔?



今にも泣き出しそうな顔?





それとも、へんに表情を作らないほうがいい?



無表情のほうがいい?






あたしの頭の中を、いろんな考えが飛び交う。






吾郎はなんの感情も感じさせない表情で、ただ不思議そうに首を傾げてあたしを見つめている。





あたしはごくりと生唾を飲み込んで、きゅっと噛みしめていた唇を薄く開いた。