「ただのカレーだけどねー。

朋ちゃん、今日寝坊したんでしょ?

疲れてるのかなーと思ってさ」






「………あ、ありがと……」






反射的にお礼を言ってしまう。





いつもだったら、健気な吾郎に感激して、嬉しくなるんだけど。





―――浮気をすると男は優しくなる、っていうけど、本当なんだな。



とか、他人事のようにあたしは思っていた。





けっこうおいしくできているカレーを食べながら、あたしの心は上の空。






………いつ切り出そうか。



どうやって切り出そうか。





吾郎の裏切りをなじる算段を考える。





でも、にこにこしながらカレーを頬張る姿を見ていると、言葉はあたしの咽喉に張り付いたまま、出てきてくれない。






………ま、ごはんくらいはおいしく食べたいし。



後回しにしよう………。