吾郎の寝息が聞こえてくる。





あたしの頭は、全身の血が昇ってきたようにがんがんと脈打っていた。





少しも眠くない。







………明日も仕事だ。



寝なきゃ………。






そう言い聞かせて瞼を閉じても、気がついたら目を開いてしまっている。





暗闇の中を見つめながら、時計の針が刻々と時を刻むのを感じるだけ。






あたしは耐えきれなくなって、そっと身を起こした。





吾郎を起こさないように気をつけながら、寝室を出てリビングに行く。






キッチンで水を飲んで、ソファに座った。





テーブルの下に、充電中の吾郎のケータイ。





あたしはそれを手にとった。





画面の電源を入れる。






自分が何をしようとしているのか、分かっていた。




やってはいけないことだと、頭では分かっていた。





でも、あたしの心が、あたしの指を勝手に動かした。