あたしは寝返りをうって、入り口に背を向けた。





吾郎が寝室に入ってきて、ベッドに足をかける気配がする。






「朋ちゃーん、もう寝ちゃうの?」






吾郎がさみしそうな声で言った。




あたしは黙って動かない。






吾郎が布団の中にもぐりこんできて、背後からあたしを抱きしめた。




吐息が頬にかかって、あたしは唐突に気づく。






今日は飲み会って言ってたのに、帰って来た吾郎からは、お酒のにおいがしなかった。








―――もう、だめだ。




疑念があたしの中で、とめようもなく膨らんでいた。






そんなあたしの気持ちに気づくはずもなく、吾郎はあたしの首に唇をつけてきた。





あたしは身を硬くして、眠っているふりをする。





しばらくあたしの背中や腰を撫でていた吾郎は、諦めたように息を吐いて、あたしに背を向けた。