―――外は寒いだろうに。




それでもわざわざベランダに出て電話するってことは………。







あたしはもう、嫌な予感しかしなかった。





ベランダの手すりに肘をついて『ミキちゃん』と喋っているらしい吾郎の背中を見つめていると、予感が確信に変わっていく。






心臓の鼓動はどんどん早くなった。




耳の奥で、どくどくと音がする。






目眩がしてくる。





あたしはぎゅっと目を閉じて細く息を吐き出し、ゆっくりと立ちあがった。







寝室に入って、ベッドの中で丸くなる。





目を閉じると、瞼の裏に、『ミキちゃん』という画面表示が点滅する。






ベランダのドアが開く音がした。






「あれー? 朋ちゃん、寝ちゃったの-?」






吾郎の能天気な声が近づいてくる。