…………でも。





ソファに座ってテレビに向かいながら、あたしはどうしても引っかかりを感じていた。






お風呂場から、シャワーの音が聞こえる。






あたしはほとんど無意識のうちに立ち上がり、吾郎のコートを手にとった。







ふわりと、やっぱり花の香り。




あたしはごくりと唾を飲み込んだ。







そして、コートをじっと眺める。







「…………あ」






あたしは、見つけてしまった。






肩のあたりに、茶色い線のようなもの。







「…………髪の毛?」








それは、一本の、長い髪の毛だった。