「………ちょっと、蓮見、どこ……」





行くの、と問いかけようとしたところで、あたしの前を行く蓮見が振り向いた。





ぶつかりそうになって慌てて足を止める。







「………なにか俺に言うことは?」






「え……あ、ありがと」






「ふん、上出来」







蓮見がにやりと不敵に笑った。





いつもの表情に、少しほっとする。








「………主任のアレ、今日が初めてじゃないんだって?」






「え?」






「だから……嫌がらせ。

室のやつらが、『また始まった』ってボヤいてたから」.






「あ……うん………」







あたしはセクハラ事件以来のいきさつを簡単に話した。







「………ったく、ほんっと、しょーもねえ男だな……」







蓮見は呆れたように髪を掻き上げた。