まったく、あのときの蓮見は異様だった。



地味な就活スーツの暗い色に沈んだ控え室の真ん中で、やけに洒落た光沢のあるスーツを着て、無造作に腕を組み、イスをきいきい言わせて、ヒマそうにしていたのだから。





あとから本人に聞いた話によると、(この待ち時間が無駄だ)と、内心憤慨していたらしい。




さらに恐ろしいことに、帰り際、『就活している学生は、卒論も抱えて忙しいんだから、無駄な待ち時間をつくらず、もっと要領よく呼ぶべきだ』という旨を社員に伝えたのだそうだから、まったく常軌を逸している。






そんな蓮見のことだから、集団面接が始まっても、やっぱり非常識きわまりない振る舞いを見せてくれた。