「でも、その時、ね。


呆然としてるあたしの視界に、たった一人、本もノートも広げずにいる男子学生の姿が入ってきたわけ。


しかも、みんながぴんと背筋を伸ばして、窮屈な姿勢でいる中で、その男は一人、堂々と足を組んで、しかも頭の上で手を組んで、目を閉じてた。


あたしの目には、まるで自分の部屋にいるみたいにリラックスしているかのように見えたねー」






「……それが、蓮見くんだったわけね」






「そ、そんな……就活中に、面接の控え室で、そんな態度をとる人がいるなんて………」







福島くんがアンビリーバボーな顔をしている。



当然だね。







「ほんと、びっくりしたよ。


だって、そこには、企業側の控え室監督の社員さんもいたんだから」






言いながら、そのときの光景をまざまざと思い出す。