「………なんだ、いいにおいだな」





「わっ」






いつの間にか、蓮見が背後に立っていた。




そして、首を伸ばして、あたしの手元を覗きこんでくる。



濡れた髪から落ちた雫が、あたしの肩にぽとりと落ちた。






「ちょっと蓮見っ!!

1メートル、1メートル!!」





「ちっ、なんだよ、めんどくせえなぁ」






ぶつぶつ言いつつも、蓮見は一歩さがった。





ふぅ、焦った。



あたしは溜め息を洩らして、ベーコンの出汁がしみこんだ油に卵を3つ、割り入れた。



菜箸で手早く混ぜて、オムレツに仕上げる。





蓮見は少し距離を置いて隣に立ち、興味深そうにあたしの動きを目で追っていた。