淡々と流れるように語る蓮見の口から、『セクシュアルハラスメント』という言葉が飛び出した瞬間、主任の手が引っ込んだ。




それを確認したらしく、蓮見がにいっと笑う。






「―――主任。


俺はあんたを、軽蔑します」






整った顔に浮かべられたきれいな微笑みは、背筋が凍るほど、恐ろしかった。






主任は、あたしの横で、氷点下20度の風にでもさらされたかのように固まっている。




蓮見がすっと立ち上がり、ゆったりと目を細めて、主任の姿を見下ろした。






「―――清水」






名前を呼ばれて、あたしは蓮見を見上げる。




蓮見が顎で「ついてこい」と指図してきた気がしたので、あたしも立ちあがった。