*
老舗文房具メーカー、(株)ササキペン。
商品企画部、筆記具課、第一企画室。
「ーーーおい、清水」
耳慣れたぶっきら棒な声に呼ばれて、あたしはいやいや振り返る。
「………なによ、蓮見」
「なに、じゃねえよ!」
不快感を隠しもせずに応えたあたしに、蓮見は不愉快を隠しもせずに怒鳴った。
その手には、ホチキスで留められたA4コピー用紙20枚ほどの書類が、くしゃりと握りしめられている。
「お前が作ったこの、新プロジェクトの報告書っ!!」
「あー、それ?」
あたしが答えると、蓮見は横柄な態度であたしを怒鳴りつけてきた。
「こんなしょぼい資料、会議に出せるかっ!!」
「はぁっ!? なんでよ!?」
「こんな雑な資料で報告するくらいならなぁ、俺が口頭だけで喋ったほうがよっぽど分かりやすいぞ!!」
いつものように、一方的に、容赦なくこき下ろされる。