「あ~かい ふ~くをくださいな~」
静寂の中でかすかに聞こえたその声は……赤い人の声!
廊下の外から聞こえるそれは、確実にこちらに近づいて来ている。
なんか私だけ狙われてない!?
それとも、赤い人が動く先に私がいるだけなのか……それは分からないけど、運がなさすぎる。
「どこか隠れるところは……」
辺りを見回した私は、さらに絶望的な事態に陥っている事に気付いた。
床に散乱する荷物が、「私はこの近くにいる」と教えているようなものだ、と。
こんな状態じゃあ、部屋に入られたら終わりだ。
それに、赤い人は匂いで人がいるかどうか分かるみたいだし……ここにいたら間違いなく殺されてしまう。
「し~ろい ふ~くもあかくする~」
そんな事を考えている間にも、歌が大きく聞こえて来ている。
迷ってる暇なんてない、すぐにでも逃げるか隠れるか決めないと。
……よし、隠れよう。
部屋から飛び出せば、それこそすぐに見つかって追いかけ回されるだろうから。