振り返らないよう気を付けながら、適当な場所に椅子を置き、それを踏み台にしてロッカー上の箱に手を伸ばした時。
『赤い人が、西棟三階に現れました。皆さん気を付けてください』
そんな校内放送が流れた。
西棟三階って、美雪がいるじゃない。
ロッカーの上のダンボール箱を手に取り、ざわつく胸の感覚に襲われた私は、少し悩んだ。
私なんかが行ったところで、赤い人に殺されるに決まってる。
だけど、美雪は真面目にカラダを探していて、西棟の三階を調べ終わる事ができるなら、今後そこに行かなくても済むのだから。
赤い人を美雪の所から離す方法はある。
私が赤い人に見つけられて、追いかけられれば良い。
あとひとつの方法は……。
「振り返れば、赤い人はここに現れるんだよね」
でも、できるなら死にたくないし、これはやりたくないなあ。
昨日殺された時は、そんなに痛みは感じなかったけど、龍平はとんでもない悲鳴を上げてたし……。
ロッカーから下ろしたダンボール箱の中身を調べながら、私の心は揺れていた。