私は三階へと急いだ。


後ろから赤い人が追いかけて来ていないかと不安でたまらないけど、振り返る事もできなくて。


背後を見られない事が、こんなに怖いなんて思わなかった。


駆け上がった階段の先、どこに美雪がいるかが分からない。


でも、また奥の教室で赤い人に追い詰められるのだけは勘弁してほしいかな。


そう思い、教室が四つある北側へと歩き始めた時だった。


「あれ? 留美子? 二階を調べるんじゃなかったの?」


振り返る事ができないのに、私の背後から声をかけられたのだ。


危うく振り返りそうになったけど……何とか耐える事ができた。


「あー、えーっと。悪いんだけど美雪、私の前に来てくれないかな?」


私がバックしても良いんだけど、後ろを見る事ができない状況で後退するのは怖すぎる。


「え? 良いけど、どうしたの? 何か変だよ」


そりゃ、変にもなるよ。


「いやぁ……実は赤い人を見ちゃってさ。振り返る事ができないんだよね」


これを聞いて、美雪はどう思うだろう?


まさか、追い返さないよね?