こんなに早く見つかってしまうなんて、私はどれだけ運が悪いのか。


足音を立てないように、コソコソと教室の前のドアに向かって移動した。


その間にも、赤い人は教室の中を移動している。


どこにいるか分からない恐怖が、私の行動を急がせた。


距離にしてドアまで2メートル程度。


すぐにでもたどり着けるこの距離が、どんなに遠く感じるか。


後少し、後少しと移動し、手を伸ばせばドアに届くというところで……小さく細い脚が、急に視界に割り込んで来たのだ。


この脚はもしかして……もしかしなくても赤い人?


顔を上げると、廊下から射し込むかすかな光で照らされて、赤い人がニタリと笑みを浮かべて私を見下ろしていた。












「見ぃつけた」












子供とは思えないくらい低い声でそう呟くと、ゆっくりと頭上に腕を振り上げたのだ。


あ……昨日も同じような殺され方をしたような気がする。


今日も死んだなと、振り下ろされる腕を見つめながら諦めた時。















まるで、そこに赤い人などいなかったかのように、フッと眼前から消え失せてしまったのだ。


「……は? 消えた? まあ、助かったんだよね、私は」