部屋の中に私がいる事に気付いていないと、そう思い込んでいた時だった。
このまま通過すると思われた赤い人が、教室の後ろのドアの前で止まり、歌を歌うのをやめたのだ。
何? 早く行きなさいよ……ここには誰もいないっての!
そんな願いもむなしく、ガラガラと教室のドアが開けられ、赤い人が入って来たのだ。
「髪の毛も足もまっかっか~」
あの歌が、よりいっそう大きく聞こえた。
どうしようどうしよう!
赤い人が入って来ちゃったよ!
見てしまったら、振り返る事ができなくなるから、赤い人の姿を見る事はできない。
ついうっかり、振り返ってしまうかもしれないから……。
「あー……誰かがいる匂いがする……」
赤い人のその言葉に、私はビクッと反応した。
匂いって、そんなので分かるの!?
てか、私は教室の入り口から分かるくらい匂ってるって事!?
歌を歌うのをやめて、クンクンと匂いを嗅いでいるような音が聞こえる。
机の陰に隠れている私が生き延びる方法はひとつしかない。
……逃げよう。