これ以上離されると、もう追い付けなくなってしまう。


どうして男の子を追いかけているのか、追い付いて何を話せば良いかも分からないのに。


私は、何も考えずに男の子に向かって叫んだ。













「ま、待ってよ……行かないでよ! 龍平!!」
















どうしてその名前を叫んだのか。


走るのを止め、私は雨に打たれて、そこに立っていた。











すると……前方の男の子も立ち止まって、辺りをキョロキョロと見回したのだ。












名前を呼んだとたん、胸が苦しくなって、涙が溢れる。


私はあの男の子がどんな人なのか知らない。


でも、ずっとずっと昔に、大切な約束をしたような気がして、もう一度声を上げた。













「龍平!!」













今度は間違いないと思ったのか、振り返って、ずぶ濡れの私にその顔を向けた。


間違いない……夢の中の男の子だ。


知らないはずなのに名前が頭の中に浮かんで、すがるように呼びかけたけど……。


不思議そうに、私を見ている龍平。








そうだよね。


私が見た夢の話なんだから、龍平が知るはずないよね。