顔を洗って朝ご飯を食べて、いつもより少し早い時間に家を出て、通学路を歩いていた。
何だか雨が降りそうな空を見ながら、傘を片手に。
そして、路地を抜けた所で、朝っぱらから仲良くふたりで登校している、高広と明日香と顔を合わせた。
「あ、おはよう留美子。どうしたの? なんか機嫌が悪そうだけど」
「おはよ。朝からイチャイチャしてるあんた達を見たからだよ」
「べ、別にイチャイチャしてねぇし! 見ろよ! こんなに間が離れて……」
ムキになって、高広が明日香との距離を手で示しすけど、私にはどうでも良い事だ。
明日香は良い子だし、高広と付き合っていても、私を邪魔者扱いする事はない。
バカな話をしながら、大通りに差しかかった時だった。
突然、ヒュウッという風の音が聞こえて……誰かの声が、私の耳に届いた。
……留美子は幸せになってね。
その瞬間、思い出される夢の中の女の子。
小さく口が動いていたけど……今の言葉が、ピタリとハマる動き。