やっと残り三分の一という所で……私の目の前で、「赤い人」が足を止めたのだ。
うつむき気味だった顔が、急に私の顔を見るように上げられて。
「キャハハハハハハッ!!」
私の身体を震わすような、イカれた笑い声を発したのだ。
間に……合わなかった。
前の世界からここまで、何人が私のために犠牲になったんだろう。
それなのに、私はうまくやれなくて……もう死ぬんだと諦めて、スコップから手を放したその時。
「何諦めてんだテメェは」
その声が聞こえたと同時に、私の視界から「赤い人」が弾かれて……代わりに目の前に現れたのは武司。
結子を逃がしたら来ると言っていたけど、本当に来てくれたんだ。
「おい、そのくらいの土なら、ふたを強引に開ければ良いだろうが。棺桶を取り出すつもりか、テメェは」
夜の学校にあった、カラダを納める棺桶と比べると、ずいぶん小さい美子の棺桶。
確かに武司が言うように、強引に持ち上げれば、何とかなるかもしれない。
「このガキは俺達に任せろ。ちょっとと言わず、明日の朝までだって足止めしてやるぜ! なぁ!」
赤い人と対峙して、武司は凶悪な笑みを浮かべる。