覚悟を決めてその腕の手首をつかみ、持ち上げようとしたけど、それはピクリとも動かなかった。
「ふぬぬぬ……何よこれ! やっぱり偽物なんじゃないの!?」
どれだけ引っ張っても、揺すっても動かない腕を持ち出すのを諦めて、私は少し考えた。
こんなに良くできた偽物なんて、本当に作れるのかな?
触ったら本物の人間の腕っぽかったし、ほんのり温かかったんだけどな。
仮に本物だったとしても、動かせなければ意味がない。
「仕方ないよね、他を探そうっと」
ロッカーをつかんで立ち上がった私は、携帯電話を室内に向けてもう一度見渡す。
そして、ゆっくりと教室の前の方に歩き出した時、その声は聞こえた。
あ~かい ふ~くをくださいな~
廊下の方から、どこかで聞いた事がある歌が聞こえてきた。
いったい誰が歌っているのか分からないけど、不気味なその声の正体を確かめようなんてとても思えない。
明らかに美雪やあゆみとは違う声。