誰が来てたって良いんだけど。
結局、土を掘る作業はしなきゃならないんだし、最後の力を振り絞らないと。
お墓の横に置かれたスコップを手に取り、私は一度掘られたであろう部分に、それを突き立てた。
あれ?
思ったより……柔らかい。
そうか、一度掘り返されて、土をかぶせただけだから、柔らかいんだ。
これなら、頑張ればふたりでも何とかなるかもしれない。
「八代先生! 交代で……掘るよ!!」
ゼーゼーと、激しい呼吸音を出している先生を横目に、私は土をお墓の横に移し始めた。
八代先生と交代で穴を掘り続けて数分。
長年風雨にさらされていたからか、思ったよりも深くない場所からそれは現れた。
土の中にあったのに、つい最近埋められたような木の箱。
ポケットに入っている心臓と、同じ雰囲気のそれが、美子の納められた棺桶だという事は、見ただけで分かった。
「め、珍しいね。土葬と言ったら、大きな桶に、手足を曲げて入れられてると思ったけど……あ、そうか。美子はバラバラにされたから、箱形なんだね」