武司も八代先生も、同じように歩き出したけど……ひとりだけ、結子は肩で息をして、その場から動こうとはしなかった。
「もう無理ぃ!! 山を登るなんてぇ! こんな事なら、私も地下室に行けば良かったぁ!!」
いつものように、結子が弱音を吐いた。
普段の私なら、文句のひとつも言ってるだろうけど、私も結子に文句を言える程余裕があるわけじゃない。
皆に想いを託されなければ、とっくに音を上げていただろうから。
「結子! そんなとこにいたら、あのガキに殺されるぞ!!早く来い!」
「嫌だぁ! もう動けないぃ!」
武司が慌てて結子に駆け寄り、何とか歩かせようとするけど、結子は動こうとせずに泣いているだけ。
「赤い人」に追い付かれたら殺されてしまうのに……。
「……良いよ、武司は結子を連れて逃げなよ。私と八代先生で心臓は返すから」
私のその言葉に、誰よりも驚いたのは八代先生だった。
何よ……逃げられるとでも思ったわけ?