ゴロンと転がり、横になった車の中で、言いたい事を言っているけど、赤い人が追いかけて来ている。


「もう車は使えない……皆、右側のドアから出るんだ!」


私の方に落ちないように、ふんばりながらシートベルトを外した八代先生が、体勢を整えながらドアを開ける。


車が横になるなんて変な感じだけど……八代先生がやったように、私もシートベルトを外し、窓を足場に立って上を見た。


後部座席では、もう武司が外に出ていて、結子と健司の脱出を手伝っている。


私も早くと、シートに足をかけた時、外にいる八代先生が恐怖に震えた声を上げたのだ。


「来てる……来てるよ『赤い人』が! 皆早く出て!」


「分かってるんだよ! 無駄口叩いてねぇで、早く引き上げやがれ!」


武司にも暴言を吐かれながら、泣きそうな表情で、八代先生が私に手を伸ばした。


「袴田! 先に俺を上げろ!! 死にたくなかったら早く!!」


私が八代先生の手をつかんだ時、後部座席の健司が、恐ろしい形相で武司をにらみつけた。


「あぁ!? 誰に言ってんだテメェ!! 根暗なヲタク野郎に何ができるってんだよ!!」