「小野山家を経由すると少し遠回りだけど……かまわないんだね?」
「そうしろっつってんでしょ!? じゃあ何!? ダメだって言ったらどうするつもりなの!?」
「う……ごめん。だけど僕は教師なんだよ? そんな言い方をしなくても……」
ブツブツと文句を言っている八代先生。
それがどうしたっての?
教師だろうが生徒だろうが、「赤い人」にしてみれば関係ないわけで。
私達が置かれている状況を考えれば、さらにどうでも良い事だ。
道路を走り、間もなく小野山家に到着する。
そう思って前方を見ると……。
ヘッドライトに照らされて、道の真ん中に立っている人影に私は気付いた。
先生もその人影に気付いたのか、慌てて急ブレーキ。
グイッと、身体がシートベルトに押し付けられて、「ぐえっ」という情けない声が出てしまう。
だけど、それ以上に悲惨だったのは後部座席の5人。
驚きの声と悲鳴が入り交じり、軽いパニック状態だ。
「こ、こらっ! 道の真ん中で突っ立ってるやつが……」
八代先生が窓を開けて、情けない声を出すけれど……その人物はこちらに向かって走って、後部のスライドドアを開けたのだ。