これ以上速くなんて走れないけど、なんとか龍平の手をつかみ、引っ張ってもらうように必死に走った。
笑い声はどんどん近付いていて……いつ追い付かれるか分からない。
恐怖が背後に迫っている。
今にもつかまれてしまいそうな気配が迫っている。
悪寒に震えながら、何とか脚を前に出していたら……。
前方を走る美雪が突然立ち止まり、後ろを振り返ったのだ。
「美雪! 何してんの!!」
「留美子、後は頼んだよ」
すれ違いざまに優しく私に微笑んで……そう呟いたのだ。
「走れ! 留美子!! お前が美紗ちゃんに頼まれたんだろ!!」
強く、今までにないくらいに強く私の手を握って、走り続ける龍平。
後半分くらいという所まで来たのに、美雪に赤い人を任せて、私は美紗の家に向かっている。
「分かってるよ! だけど!!」
もう何を考えれば良いのかも分からない。
少しの間のお別れ……なんて事を思えば良いのか、永遠の別れなのか。
元の世界に戻って、この気持ちはいつか消えてしまうのか、一生苦しむのか。
そんな考えが浮かんではすぐに消えて、わけも分からずに涙だけが出てくる。
美雪が赤い人を止めてくれているのだろう。