「美紗……私は、美紗に会えて良かった。世界がどうなっても、絶対に忘れないから」


美紗の身体の震えが、私にも伝わる。


怖くて、悲しくて……心に納め切れない気持ちが溢れているんだろうな。


「ありがとう……私も会えて良かった。頑張るから……後の事はお願い」


軽く、私の背中に腕を回して抱きしめて、スッと私の腕から抜けるように離れた。









これで本当にお別れ。











校舎の中に入った美紗が、最後に一度振り返り、私達に早く校門の前に移動しろと指示をした。


近道の土手は使ってはダメだと言って。


姿が見えなくなる前に言われた言葉は……これから先、何があっても忘れたりしない。














「さようなら……留美子」













それから私達は、美紗に言われた通りに校舎の東側を通って生徒玄関にたどり着いた。


健司がどうなったのか……声どころか物音ひとつしないから分からない。


赤い人に殺されてしまったのか、それとも別の場所にいるだけなのか。


どちらにしても、健司がいなければ赤い人のカラダを探す事はできなかった。


生徒玄関を走り、簡単に開いたドアを抜けて校門へと走った私達。


カラダを全部そろえたから、今まで開かなかったドアが開いたのかな。