「池崎君、持ち上げるのは無理よ。蹴って転がしましょう」
「そ、その方が……良いみたいだ。あー、手がいてぇ」
岩から手を離し、パンパンと掌を払う龍平。
美紗が提案したように、岩に足をかけて。
龍平と美雪、美紗の3人が岩を動かすために、岩にかけた足に力を込めた。
グラッと傾きかける岩に、あとちょっとと、私の拳に力が入る。
何度も何度も力を込めて……ようやく岩がゴロンと転がった。
今まで岩が鎮座していた場所に、ポッカリと穴が開いていて。
一見何もないかと思われたそこの土を美紗が払うと……出て来たのは、小さな肉の塊。
淡く光るその物体が何なのかは、人体に興味がない私でも分かった。
「これって……心臓……」
私がそう呟くと、美紗は小さくうなずいた。
「美子がバラバラにされて校舎に隠される時、遺体から心臓の一部が落ちたのよ。それがこれ」
土の中から心臓を取り出して、それを私に渡そうとする美紗。
うえっ!! こんな物を渡されても困るんだけど!
とは言え、美紗と約束しちゃったし……。
嫌だけど、手を差し出して心臓が置かれるのを待った。
ポトンと、手に物が置かれたような感覚があるけど、不思議と重さは感じない。