偶然なんかじゃない。私の目の前でマネキンが、まるで意思を持っているかのようにその首を動かしたのだ。
ただでさえマネキンなんて気持ち悪いのに。
背筋に走る悪寒を抑えながら、私はふたりの元に走った。
廊下に出ると、ふたりはマネキンに向かって、人差し指を立てた手を向けたり、廊下を歩いていたり。
私は怖い思いをしたってのに、何をやってるんだか。
「何なのよこれ! マネキンの首が動くのが分かってて、私に行かせたの!? 先に言ってよね!」
「ごめんなさい。説明してる暇なんてなかったの。えっと……ガラスまでの距離がおよそ40センチ、首の角度はこれくらいで……俯角が……」
私に軽く謝って、ブツブツと何やら難しそうな独り言。
美紗も美雪も、いったい何をしているのか、私にはさっぱり分からなくて。
何をしているのかも教えてくれないから、私は見ている事しかできない。
「ねぇ、ふたりとも何してるのよ? カラダを探すんじゃないの?」